人体という小宇宙

人体システムは、自然界と一体調和して高度に完成したシステムであり、小宇宙といわれています。制御中枢の脳と連携し、自立した機能を持つ五臓六腑に、全体システムをみることができます。

 

 

松果体とメラトニン

  

近代哲学の父といわれるデカルトは、この世には物質と精神という根本的に異なる二つの実体があるとし、物質と精神は、松果体を通じて相互に作用すると言いました。ヨガでは松果体は第3の目と言われ、修行僧たちはこのチャクラを活性化していきます。また孔雀の羽根の中央に青く輝く部分は松果体に例えられ、古くからヒンズー教の神々が象徴的に頭に身に付けています

 

松果体は潜在意識とつながっています。私たちは潜在意識とつながり、自分を活発に啓発することにより、無限の可能性を秘めている松果体の機能面を生かしていくことができるのではないかと考えています。

 

松果体は小さな豆粒大の内分泌器(ホルモンを分泌する器官)で、メラトニンというホルモンを分泌することは50年ほど前までは分かっていませんでした。

 

メラトニンには、太陽の光が朝に目に入ってから1416時間たたないと分泌されないという性質があります。そのため太陽の光を浴びてから1416時間後には自動的に体が眠りの体制に入るようにセットされているのです。松果体は網膜が受ける光の量の情報をもとにメラトニンの分泌量を決定します。夜、寝室の明かりを消し、目に入る光の量が減ると、それを感知した松果体がメラトニンを分泌します。メラトニンが分泌されると、体はそれを察知し周囲が暗くなってきたことを知ります。分泌されてから23時間が最も眠りにつきやすく、午前2時頃に分泌量がピークに達します。

 

このホルモンの分泌は子どものころは活発で、1歳から5歳にかけて最も多く分泌されます。このため活性酸素から細胞を守り、性的成熟を思春期まで抑えるなど、バランスのとれた成長を促しています。一般的に年齢とともに減少し、とりわけ高齢者やうつ病患者は、分泌量が低下していると指摘されています。

 

メラトニンは人をリラックスさせる作用があり、人間の病原菌に対する免疫力を高めたり、老化防止(抗酸化)の効果が期待されているだけではなく、体全体のホルモンのバランスを調整するといわれています。私たちの体はたくさんのホルモンの微妙な関係のうえに成り立っていますので、メラトニンは非常に重要な役割を担っています。

また、メラトニンには、体内時計をコントロールする働きがあるということも報告されており、睡眠の質を改善し睡眠の導入を容易にすることが示されています。メラトニンの分泌を促進するためにも朝早く目覚め太陽の光を浴び、夜たっぷりと睡眠をとる規則的な生活は欠かせません。

 

 

セロトニンとメラトニン

 

朝目覚めたら、ベランダや庭に出て、太陽の光を浴びましょう。

 

セロトニンは、太陽の光を直接浴びることによって分泌量が増えます。セロトニンは、神経伝達物質であり、人に穏やかな感情を与える作用があります。ドーパミンやノルアドレナリンなどの働きを抑制する作用をもち、精神を安定させる働きを持ちます。ですから、セロトニンが不足すると、感情や考えのコントロールが効きにくくなり、情緒を不安定にしたり、うつ病の原因になると考えられているのです。セロトニンの分泌が正常に働いている場合は、脳の覚醒や心身の活動がスムーズに行え、目が覚めた時に、頭がすっきりしていて、気分爽快な状態で覚醒できるのです。また、やる気や集中力の向上作用もあります。

 

セロトニン神経は、脳の中心である脳幹のさらに中央部分に核を持ち、あらゆる神経系に結合している神経です。セロトニン神経の働きは、大脳皮質、感情をつかさどる大脳辺縁系、生存にかかわる視床下部、脳幹、小脳、脊髄などにおよび、オーケストラの指揮者のような役割を果たし、脳の意識のレベルや元気の状態をつくりだしています。起きているときには、セロトニン神経から低頻度のインパルスが発せられています。これにより、覚醒状態を保って、次の行動に備えることができるのです。この状態は車が走り出す前の「アイドリング状態」にたとえられます。一方セロトニン神経が弱ると、寝起きが悪かったり、自律神経失調症の状態があらわれます。また、姿勢を保つ働きが弱くなり、ぐったりした姿勢や張りのない顔つきになってしまうのです。

 

セロトニンは、トリプトファンからつくられます。セロトニン神経がつくるセロトニンは脳の中で再吸収リサイクルされ、余分なものは脳から外に出て血液に溶け込み最終的には、尿から排泄されます。

 

脳の松果体では、メラトニンをつくっていますが、松果体は、トリプトファンからセロトニンをつくって、さらにメラトニンに変えます。起きているときはセロトニン、寝ているときはメラトニンという一日のリズムで、私たちの身心の活動は調整されています。

 

脳や身体が眠りと活動を健康的なリズムで行うためには、セロトニンとメラトニンという二つの物質が正常に働いていなければなりません。そしてこの二つの物質は太陽という大自然の恩恵によって体内に大切にはぐくまれていることがわかりますね。

 

 

海馬(かいば)

 

海馬(かいば)は、大脳辺縁系の一部で、外観がタツノオトシゴの形に似ていることから「海馬」と呼ばれています。特徴ある構造を持ち、記憶や学習に関わる脳の器官です。記憶が最初に貯蔵されるのは、海馬です。記憶は次第に海馬から消去されて、大脳新皮質へ移ります。近年になって海馬歯状回では生涯にわたって新しい神経細胞(ニューロン)が生まれることがわかり(希望あふれる解明ですよね)、記憶形成のメカニズムに大きな役割を果たしていることがわかってきています。神経細胞(ニューロン)の新生は記憶の獲得だけではなく、海馬の記憶の消去に関わるといわれています。海馬は記憶が一時的に蓄えられる場所で、記憶容量は小さく、すぐにいっぱいになってしまいます。だから、海馬は記憶を整理し、消去して、容量がはるかに大きい大脳新皮質に送ることで、新しい記憶を獲得するスペースをつくります。このはたらきに、神経細胞(ニューロン)の新生が関わっているのです。この新生が活発でなくなると、海馬の記憶容量がすぐにいっぱいになり、記憶力が衰えると考えられています。

 

ヒトでは海馬に障害を受けると記憶の機能に重大な障害が生じること、実験動物では海馬を破壊すると殆どの学習が成立しなくなることから、海馬は記憶と学習にとって必要不可欠な脳内器官として知られています。海馬の機能には記憶以外に空間認知・ナビゲーション、文脈形成とその想起、不安などの情動・感情調節に関する機能もあり、海馬は記憶の連合・比較・想起の中心ターミナルとして認知の統合にも深く関わっていると思われます.

 

知識は、似たような記憶をつなげて意味のあるものに変えることから生まれます。大脳新皮質にはたくさんの引き出しがあり、一旦そこに整理された記憶は安定していて互いにつながりにくい状態にあると考えられます。しかし、何かを思い出すときには、記憶が引き出しから海馬へと引っ張り出されます。そして再び引き出しにしまわれるとき、似たような記憶がつながり、再び固定します。こうして「記憶」は整理され、「知識」となるのではないかと考えられています

 

うつ病や統合失調症の患者には海馬の神経細胞(ニューロン)新生に障害があるといわれており、海馬のある部位に(潜在意識が活性化している状態の)θ波(シータ波)と同じ電気刺激を与えると新生ニューロン分化が促進されることもわかっています。潜在意識を活性化すれば、海馬のナビゲーション機能や中心ターミナルとしての機能が強化され、記憶と学習の機能を向上させ、新たな知識を獲得する効果が期待できるのです。 

 

また、心理的ストレスを長期間受け続けるとストレスによって多量にコルチゾールが分泌され、海馬の神経細胞が破壊され、海馬は萎縮します。心的外傷後ストレス障害PTSD)やうつ病患者にはその萎縮が確認されています。たとえば列車で事故に遭ったPTSDの患者は、列車だけではなく車にも乗れなくなったり、人ごみにいられなくなったりします。これは、当時の記憶が海馬にあるうちにほかの記憶と強くつながったままになってしまい、ストレスを感じ、体内で再びコルチゾールが分泌されてしまうからだと考えられています。私は自分の体験からも、強いストレスを感じるような経験をしたとき、一呼吸おいて、θ派(シータ波)の状態で潜在意識とつながり、自発的に不安と強い思い込みを手放すことができれば、そのことにより、記憶を再整理して神経細胞の新生を促進させているのではないかと思っています。海馬から強いストレスを受けた記憶を消去し、単に「強いストレスを受けた体験の記憶」として大脳新皮質の引き出しに整理することができれば、PTSDの再発を防ぐことができると考えています。私たちは潜在意識とつながることで、未知の可能性を開いていけるのです。

 

 

腸という小宇宙

人類の起源は海にあり、海底でたんぱく質が生まれ、これらが集まり細胞が形成されたのが生命と言われています。超古代、生命が多様化していく中でわれわれの遠い祖先は消化をつかさどる「腸」とそれをとりまく「自律神経」として誕生しました。私たち人間が母親の胎内で受精卵から人の形となっていく過程で最初にできあがる器官が腸です。

 

腸はしばしば小宇宙に例えられ、第2の脳と呼ばれています。腸の働きは、脳と別回路で営まれていて、例えば脳死の状態になっても、腸は正常に働き続けます。

 

 腸管は全長7mもあり、その内面にはひだがあり、そのひだを広げていくとその面積はテニスコート一面ほどにもなります。腸管は体内に侵入してきた異物を体のためになる安全なものか、害を与える危険なものかどうか識別し、良いものは取り込み、受け入れ、悪いものは排除する精密なシステムを備えています。大腸の中では、500種類、1キロほどの善玉菌、悪玉菌、日和見菌などの腸内細菌が共生し、私たちの健康を保つ手助けをしてくれています。

  

最近の研究で、セロトニンが腸にも存在する事がわかっています。体内のセロトニンのなんと95%が腸でつくられているのです。細胞が小腸の壁にセロトニンを吹き付けることから消化が始まり、その情報は神経細胞(ニューロン)を通って伝達され、消化酵素が分泌され、食物を腸の奥へと移動させます。腸のセロトニンは脳との仲介役もし、脳に消化管の状態を報告しています。

 

また、腸のセロトニンは過敏性腸症候群に関わっています。過敏性腸症候群とは、不安やストレスを伴い、腹痛、痙攣、膨満感、下痢と便秘の相互症状を引き起こす慢性の症状ですが、セロトニンレベルの変化により引き起こされている(セロトニンが足りないのではなく、あり過ぎて問題が起きている)のが分かってきています。腸は第2の脳といわれるように、豊かな感情を持っています。私は、腸の神経系は、ある意味人体の自浄作用のような働きを担っていて、人間の情動が激しく動揺したときに症状として現れる側面があるのではないかと考えています。つまり症状は現象としては「問題」として捉えられますが、小宇宙全体からみると防衛システムとして働き、バランスを保つための自浄作用として働いている側面があるのです。心と体のメカニズムについて、現代の科学で解明されている部分はわずかですが、今後実証的にいろいろなことが分かってくるものと思います。

 

 

 

子どもの異常行動とストレス

脳では、視床下部の神経がストレス反応の起点となり、それが左図の赤い部分、脳下垂体から副腎皮質ホルモン分泌を促し、副腎皮質からストレスホルモンであるコルチゾールを分泌させて、種々のストレス反応を発現させ、戦う、逃げるなどの行動を引き起こします。 ストレスが長期に及ぶとコルチゾールの過剰な分泌が続き、うつ病の発症にかかわるといわれています。

 

親の庇護下にある子どもは、生活環境を自分で選択することや周囲の状況をコントロールすることができません。時として、同じストレスを長期間にわたって感じ続けることや、耐え難い重度のストレスに身をおくこともあり得ます。そのような場合、子どもの肉体や精神の安定は損なわれ、その結果として病気・異常行動などの異変が表れてきます。

 
子どもに表われる問題を、親が鏡として、自分の課題と捉えることができれば、親の成長のために、どんなに子どもたちが悩み苦しみ、尽くしてくれているかに気づくことができます。大抵の親は自分本意に子どもを愛しますが、無意識にコントロールを用い、見返りを求め、子どもの真性を傷つけていることもあるのです。
 

呼吸に意識を向けましょう!

知人が脳波の測定をしているとき、呼吸を意識してコントロールしたら、脳波がベータ波からアルファ波、そしてシータ波に変化していくのを確認したと教えてくれました。
私たちの脳波は、一日中変化を繰り返しています。

ベータ波とは脳が活動している状態によく表れます。覚醒時は主に顕在意識が働いています。あせったり、怒ったりしているとき、呼吸も早くなっていますよね。このとき優位に働いているのは闘争と逃避の神経といわれる交感神経です。交感神経は、脳と体を動かすのに適した状態にしてくれますが、ストレスが多すぎると、興奮、緊張が続いてしまいます。

アルファ波はリラックスして、しかも集中でき、副交感神経が優位になると表れやすくなります。副交感神経が優位になると怒ったり不安になったりすることはできないので、ストレスフリーに、心が穏やかな状態をキープすることができるのです。また、潜在意識につながりインスピレーションを受けやすい状態になります。

副交感神経は一般的には、昼間あまり働いていないといわれていますが、例えば昼食をおなかいっぱい食べたあとには働きます。日常ちょっとした合間に呼吸を意識することにより、リラックスし、脳に酸素を十分に送り込むことができ、脳の活性化にもなります。さらに呼吸を深めて瞑想時に出るといわれるシータ波が表れる状態になるともっと潜在意識の無限の可能性を引き出しやすくなります。


人は心拍数をすぐに下げることはできませんが、呼吸だけは意識的に調節できます。
日頃からゆったりとした深い呼吸を心がけ、腹式呼吸を習慣にすることで、怒りや不安の感情から自由になり、ストレス耐性がアップします。 呼吸に意識を向けることを心がけましょう。