私たちの実践

  皆さんは「釜石の奇跡」という言葉をご存知ですか。「釜石の奇跡」とは、311の大震災で大津波に見舞われても、岩手県釜石市の約3000人の小中学生の多くが高台に避難して、99.8%が無事だったことを指して言われています。これには、市の実践していた防災教育が大きく貢献しています。


 「津波てんでんこ」といい、三陸地方には「津波が来たら、家族はてんでばらばらに逃げろ」という昔からの貴重な教訓が残されています。てんでばらばらとは、一見、冷たいように感じますが、想定外の大津波が来たら、家で待っていたり、家族を助けようと戻ったりしたら自分の命も助からないのです。

 歴史的に三陸地方には百年に一度ほどの周期で大津波による被害が繰り返されてきたのにも拘わらず、巨大な防波堤が建設されたこともあり、大人たちの危機意識が希薄になっていたことを危惧した、群馬大学大学院の片田敏孝教授は、釜石市の教育長に掛け合って、市内の小中学生を対象とした熱い防災教育を行っていました。片田教授は、子どもたちにたとえ一人で家にいても必ず「逃げる」ことをたたきこみ、最初は、「家で親を待つ」と答えていた子どもたちには、親ごさんに「あなたのお子さんが家で待つと言っていますが、これでお子さんが助かると思いますか?」と問いました。真剣に話し合い、結果、ひとりでも逃げることを決意した子どもたちの親もまた、迷わず、自分が逃げるという行動がとれるようになりました。


実際に津波に見舞われた時には、ひとり一人が「逃げる」ことを実践し、また最初に避難した場所が、津波に覆われる危機がせまったことを感じた中学生たちは、さらに安全な高台に多くのお年寄りや小さな子を避難させ、人を助ける実践のできた子どもたちもいました。実際、被害は大きく、奇跡がおきたわけではないので、「釜石の奇跡ではなく、釜石の実践」だと子どもたちは語っているといいます。


翻って、想定外の出来事は、台風、地震、竜巻、政治的・経済的リスクなど身の回りでいつ起きてもおかしくない状況です。危機意識を高め、常に家族や身の回りのひとたちと話し合って受け身ではない防衛対策と実践を深めてゆきましょう。